宮本武蔵の小説に出てくる挿話です。
武蔵が少年に剣の指導をします。
その方法がステキでした。
あるとき、宮本武蔵のもとに一人の少年が訪ねてきました。
少年は「父のかたきが討ちたい」と言い、武蔵に剣の手ほどきを願い出ます。
しかも、勝負はあす。
時間がありません。
このときの武蔵の指導のしかたが、とっても興味深いんです。
読んでいて、3つのポイントがあるように感じました。
1.やる気を引き出す
武蔵はまず、少年に剣を振らせてみました。
いまいちでした。
でも、そのことは口に出しませんでした。
今から直しても間に合わないし、少年の自信を失わせてしまうからです。
そのかわり、こう言いました。
「それでいい。みごとだ」
少年はよろこびました。
自信をつけた少年は、ますますやる気をもって練習をつづけました。
2.まず一つの方法を完璧に
武蔵は「秘法をさずけよう」と言い、ごくシンプルで実用的な攻撃のしかたを、ひとつだけ教えました。
それだけを繰り返し練習させました。
3.必ずできると暗示をかける
十分な練習のあと、武蔵は「これで、勝てる」と少年にお墨付きを与えました。
さらに、少年を勇気づけるため、こう言いました。
「勝負の日、足元の地面にアリが這っていれば、運のある証拠。勝利はまちがいない」
季節は真夏です。
地面にアリがいて当然です。
これは勝利のための暗示でした。
少年は、勝負に勝ちました。
武蔵の指導のしかた、とても面白いですね。