対訳『五輪書 The Book of Five Rings』の感想です。
五輪書 The Book of Five Rings【日英対訳】 (対訳ニッポン双書)
海外のビジネス書
『五輪書』は海外でも人気があるみたいです。ハーバード・ビジネススクールの教材としても取り上げられて、アメリカでベストセラーになったそうです。
論理的なので英訳しやすい
よく聞く話としては、『五輪書』は当時の日本人が書いたものとしては、とても論理的な文章だと言われています。日本の文化や価値観への理解がそれほどなくても、論理的に読める文章なのだそうです。この点について、本書のコラムで次のように書かれています。
『五輪書』を英訳するにあたって、日本文化の説明や、日本人の価値観などといった道徳的な日本語表現をどのように翻訳するかといったノウハウはそれほど必要とされません。(引用)
「日本文化の複雑な背景に翻弄されることなく」翻訳できるのが『五輪書』の特徴なのだそうです。
原文と英訳
この本には『五輪書』の現代語訳と英訳の2つが載っています。原文は載っていません。 訳の傾向としては、『五輪書』を剣術に限った本として読むのではなく、ビジネス書として読もうとしているように思います。
実際に『五輪書』はそのように読むことができますよね。
翻訳について
『五輪書』は、地・水・火・風・空の5巻からなっています。水の巻にこう書いてあります。「ここに書かれていることを、一言一言、一文字一文字、噛みしめよ」と。学ぶための心がけを示した言葉です。「一言一言、一文字一文字」。これをどう訳しているかというと…
詩的なこだわり
本書ではこう英訳しています。「each and every word, each and every letter」。このeachとeveryの組み合わせに詩的なこだわりを持ち、あたかも賢者が道を説いているかのような雰囲気を表現しているのだそうです。訳のいろいろなところに、こうした工夫があるんですね。
人生の知恵
この本の趣旨は、一つ一つの剣術のノウハウを書いた文章から、ビジネス上のヒントや、人が生きてゆくための知恵を引き出してみよう、というものです。『五輪書』に記されている「いわば禅問答のような思考方法」に、読者ひとり一人が自分自身の経験をあてはめてチャレンジしてみる。そういう楽しみがあります。